出国
大きな煙突の如く聳えるホールバックを背に武蔵小杉駅を降り立つ。酷く蒸し暑い。これだから東京の夏は嫌いだ。スマホを眺めて、いつ来るかもわからない相方を待っている。
遠くから大きな緋色の物体がこちらに向かってくる。果たして改札を出てくる緋色物体を見て、それがマカルーを背負った相方だと気付かされた。なぜか若干ニヤついてる。この暑さと荷物量にやられたのだろう。
「飯何にする?」相方第一声
「寿司食いたい」私第一声
最近、肉より魚派になって少しばかり自身の胃の衰えと哀しみを感じるようになった私だが、海外に行っては生の魚など食えぬとわずかに残る大和魂に従った。
武蔵小杉のくら寿司は少しばかり高い。恐らく高級住宅街にあるからであろう。画面の数字と睨み合いながら、少しでも安く満足度の高いネタを選ぶ。ブリを頼んだ。
幾許か時間が経過したのち、通路を挟んで向かいのテーブルに女子小学生らしき3人組が仲良く同じ側の席に座った。向かいの席には見たことあるその昔¹市松模様を模してデザインされたと言われるお高いバックが置かれてる。目を疑う。
なんたる格差。景気付けとばかりに数ヶ月ぶりの寿司でいかに安くするかを考える人間かいる一方、高級バック片手に都会の値段に設定された寿司でランチする小学生。円安という波による米国との格差をこれから体験しようとする身には、思わぬ角度からの一撃であった。
「そろそろいくか」
「そうだな」
1人1200円ほど。普段ならしない贅沢だ。
さて、2人揃って煙突を背負い成田へ向かった。適度に腹が満たされ、程よい揺れとなっては大いなる眠気に侵される。
気付いたら千葉。
目を閉じる。
開けると成田。
成田空港とは前回も感じたがえらく都心から離れている。羽田とは違い、島流しにでもあったような空港だ。菅原道真も流されて、祟りにされ、現代では神になっている。果たして成田空港もいずれは、、、と考えている間に成田空港第1ターミナル駅に着いた。
前回同様、勝手は同じだ。カートに煙突をドスンと叩きつけ、ゴロゴロと押す。北ウィングへ行き、ベンチに腰掛け荷物を32kgに納めるための格闘を繰り広げる。
結果は、、、
2人合わせて¥21000のオーバーチャージ。これも円安の影響か。いや理由は明白。我々の失態ではあるが何かと外に理由をつけることで自信の安定を図る。もういっそ忘れれば良いのだ!
アルファベットばかりのチケットには21:20出発とある。まだ時間はある。何もしなくても腹はへる憎き、しかし愛すべき体にサンドイッチをくれてやり、保安検査を通る。コンビニでここぞとばかりに食料を買い込み、機内食をケチった快適な空の旅へ備えた。
さて、機体が動き出す。
また、腹が満たされ、程よい揺れとなって大いなる眠気に侵される。
次目を開けたら千葉でないことを祈りながら眠った。
¹市松模様を模してデザインされたと言われるお高いバック
:つまりはルイヴィトン
米国編part1です。
まだ、Yosemiteではないですが見ごたえりますよ。是非!!